☑ 相続税はいくらかかりますか?
相続税は、相続または遺贈によって財産を取得した場合、取得した方に課税される税金です。相続とは、民法で定められている法定相続人が故人から財産を取得することで、遺贈とは、遺言によって相続人やその他の人が故人から財産を取得することです。
相続税の計算は、故人の財産総額から「基礎控除額」を差し引いた額を、民法で定められる法定相続分で分割して算出します。そのため、相続した財産の評価額の合計が、基礎控除額を超えなければ相続税は課せられず、税務署への申告も必要ありません。
また、申告をすることによって適用を受けることができる特例(配偶者の税額軽減、小規模宅地の特例)によって、相続税が課せられない場合もあります。
いずれの場合も、相続税を算出するためには、財産の税制上の評価額を正しく算出する必要があります。また、民法が定める相続に関する規定を正しく理解する必要があります。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
どのくらいの相続税が課税されるのか試算がお済みでない方は、早めの簡易診断をお奨めします。相続への対策は時間が掛かります。特に、不動産や、会社経営をされている方の自社株の対策には5~10年の時間が必要です。
相続税の簡易診断
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☑ 相続が発生したら何に気を付ければよいですか?
残念ながら相続が発生した場合は、以下の点にご留意ください。
(1)預貯金口座の凍結
被相続人の死亡により、数日のうちに預金の引出し等ができなくなります。葬儀費用など、相続発生後は何かと出費がかさみますので資金を引き出しておきましょう。
(2)領収書が出ない場合
相続人が負担した葬儀費用は、相続税の計算の基礎となる相続財産から差し引くことができます。しかし、お寺などに支払う読経料などには領収書が出ないことがあります。このような時は、支払った相手先と日付及び金額をメモしておきましょう。
(3)遺言書の確認
相続が発生したら、遺言書の有無を早期に確認しましょう。遺言書が故人の自筆によるものであれば、未開封のまま家庭裁判所へ持ち込み、検認を受ける必要があります。公正証書以外の遺言書の場合は、検認を受けて初めて効力を発生します。この際には、相続人全員の立ち合いが求められます。
遺言書があれば、その後の相続手続きは、原則、遺言書に従って進められます。しかし、遺言書の内容が、民法で定められた必要最低限の相続分である「遺留分」を侵害している場合は、侵害された相続人は「遺留分減殺請求」の申立てを行うことができます。なお、遺留分は法定相続分の1/2となり、相続人が親のみの場合は1/3となります。
一方で、遺言書がない場合は、相続人全員で協議を行って遺産の分割方法を決めて、その結果を明記した「遺産分割協議書」を作成する必要があります。
(4)遺産分割協議に時間が掛かる場合
① 相続税の申告期限は、相続が発生してから10ヶ月以内です。相続税が軽減される「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の評価減」の特例の適用には、遺産分割協議が確定していることが適用要件となっているため、申告期限までに分割協議が確定しない場合は、特例の適用はできません。その後、3年以内に分割協議が確定すれば、申告を訂正することはできます。
② 賃貸マンション等を相続される場合は、注意が必要です。遺産分割協議が整えば、相続発生日に遡って権利関係が確定します。しかし、所得税等の税法上は相続が発生してから遺産分割協議が整うまでに生じた所得は、法定相続分で処理することになります。すなわち、この間に確定申告があれば、賃貸マンションからの所得は不動産所得として、法定相続分の申告を行うことになります。
個人事業者の中には、この規定により消費税の免税事業者から課税事業者へ変更となるケースもあるため、早めに、相続に詳しい税理士への相談をお奨めします。
(5)相続財産に根抵当権が設定されている場合
相続開始後、6か月後に根抵当権は自動的に元本の確定がなされ、相続開始の時点に遡って債務残高に基づいた通常の抵当権に変更されます。抵当権への変更により事業への影響が生じる場合は、変更が必要です。
☑ 相続財産の評価方法によって相続税が変わるのですか?
相続した不動産は、路線価または倍率表に基づいて評価額が算出されますが、個別事情を考慮して、評価を下げることができます。具体的には、「広大地」「セットバック」「都市計画道路予定地」「容積率」、その他利用価値が低くなる土地等です。これらの事情を反映させるためには、専門知識とともに現地を確認することが不可欠ですので、相続税の申告は近隣の都道府県にある税理士事務所に依頼された方が、交通費等だけを考慮しても、報酬を抑えることができます。
また、自宅用地等には小規模宅地の特例が適用され、最大80%の評価の減額が可能です。相続した不動産の評価額が下がれば、それに応じて相続税も減額されます。
☑ 相続に関する手続きとその期限を教えてください。
相続発生後のスケジュールを下の表でご確認ください。各法律により期限が定められていますので、ご留意ください。
手続の種類 | 期限 | 手続窓口 | 提出書類 |
死亡届 | 7日以内 | 被相続人の住所地の市町村役場 | 死亡診断書または死体検案書 |
遺言書の確認 | 死亡後遅滞なく |
自筆遺言書の場合は、被相続人の住所地の 家庭裁判所にて検認手続きが必要 |
遺言書原本(未開封のまま) 遺言者の戸籍謄本 相続人全員の戸籍謄本 受遺者の戸籍謄本または住民票 |
相続放棄 限定承認 |
3ヶ月以内 | 被相続人の住所地の家庭裁判所 |
相続放棄申述書 申述人及び被相続人の戸籍謄本 |
所得税の申告 | 4ヶ月以内 | 被相続人の住所地の税務署 | 確定申告書及び添付書類 |
根抵当権の 後継債務者登記 |
6ヶ月以内 | 法務局 |
根抵当権設定契約証書 根抵当権設定者の権利書 根抵当権設定者の印鑑証明等 |
相続税申告 |
10ヶ月以内 | 被相続人の住所地の税務署 |
相続税の申告書 その他添付書類 |
遺留分の減殺請求期限 |
1年 | 家庭裁判所 |
申立書 申立添付書類 |
☑ 葬儀の際に支出した費用の取扱いはどのようになりますか?
葬儀の際に支出した費用の一部は、「葬式費用」として相続財産から控除して相続税を計算することができます。そのため、領収書などを残しておいてください。万一、領収書が発行されない場合でも、日付・支出した相手・金額・負担した方を記録しておいてください。
◆「葬式費用」の範囲
◆「葬式費用」に含まれないもの
☑ 遺言書の作成方法を教えてください。
遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。どの専門家に聞いても、公正証書遺言が間違いがなく、お勧めです、答えると思います。ここでは、それぞれの作成方法とメリット・デメリットをご案内します。
① 自筆証書遺言
全ての文章を自筆で書く遺言書です。遺言者以外の者が一部でも書いたり、パソコンなどで作成すると無効になります。偽造を防ぐためで、自筆証書遺言の効力についての争いで最も多いのが、自筆か否かという点です。
また、相続が発生したのちは、家庭裁判所の検認手続きを受けなければなりません。受けない場合は行政罰が生じます。
自筆証書遺言の要件は、以下の通りです。
◆ メリット
◆ デメリット
② 公正証書遺言
公証役場で公証人に作成してもらう遺言で、紛失・改ざんのない最も確実な遺言方法です。公正証書遺言の作成手順は、以下の通りです。
◆ メリット
◆ デメリット
③ 秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が自分で作成した遺言書について、その「存在」のみを公証人が証明した遺言書を指します。遺言書の内容を誰にも知られず、かつ、公証役場で存在を証明することにより真贋の争いが生じないメリットがありますが、公正証書遺言が年間10万件以上作成されるのに対して、秘密証書遺言は約100件と非常に少ないのが現状です。その作成手順は、以下の通りです。
秘密証書遺言は上記のように作成され、さらに、相続が発生した際には、相続人は家庭裁判所で検認手続きを受けなければいけません。作成及び相続時の手続きに煩雑さを伴う割には、自筆証書遺言と同様に、遺言としての要件を欠くリスクがあるため、お奨めできません。
☑ 被相続人が加入していた社会保険の手続きを教えてください。
相続が発生したら、医療保険と年金の手続きを忘れずに行いましょう。資格の種類に応じて手続きや窓口が異なりますので、以下をご参照ください。
◆ 国民健康保険に加入の方に相続が発生した場合
◆ 健康保険に加入の方に相続が発生した場合
◆ 国民年金に加入の方に相続が発生した場合
◆ 厚生年金に加入の方に相続が発生した場合
◆ 共済組合(短期給付)
◆ 共済組合(長期給付)